たより巻頭言「道しるべ」 大柴 譲治

「心を尽くして主に信頼し、自分の分別には頼らず、常に主を覚えてあなたの道を歩け。そうすれば、主はあなたの道筋をまっすぐにしてくださる。」(箴言3:5-6)

映画『アポロ13』(1995年米国)は様々な意味で興味深い作品であった。その中でも特に私の心に印象に残っている場面がある。かつて海軍パイロットであったアポロ13号のジム・ラベル船長がインタビューに答えて、自分の体験したある事故に言及するシーンである。日本海での夜間訓練飛行中に突然、計器の故障でコックピット内のライトがすべて瞬時に消えてしまった。機を水平を保つためのメーターも方角を示すメーターも、何も見えない。すべてが真っ暗闇である。絶体絶命のピンチ!祈るような思いでいたら、しばらくして目が闇に慣れて来ると、不思議なことに、海が夜光虫で輝いているのが見えてきたと言うのである。そしてそこには、数時間前に空母が通った跡がくっきりと線になって見えた。それを道しるべとしてようやく母艦に帰艦することができたとラベル船長は淡々と語っていた。どのような危機の中にあっても沈着冷静さを失わないラベル船長だからこそ、アポロ13号の故障という絶体絶命の危機を乗り越えて地球に生還することができたとも言える。不可能に見えることを可能としていった宇宙船と地上のクルーたちの手に汗握る懸命な努力も必見である。

クリスマスになるとこのエピソードを思い起こす。すると不思議な慰めと温もりとが心に与えられるのである。闇の中で目を凝らすと見えてくるものがある。それはもしかすると、明るいときには見えないほど弱々しいものかもしれない。否、それは目を閉じなければ見えてこない光かもしれない。しかし、そこには確かに何かがあるのだ。救いに至る道筋が上より備えられているのである。今年もクリスマスを迎えようとしている今、心の目を凝らして私たちのために備えられた人生の道しるべを見出してゆきたいと願う。

悲しみの中に置かれた者たちの上に幸いがありますように。メリークリスマス!


(2003年12月号)