たより巻頭言「三度目の臨床牧会訓練(CPE)」 大柴 譲治

三度目の臨床牧会訓練(Clinical Pastoral Education)を前に 

念願のCPEがいよいよ始まろうとしている。6/1に渡米してHuntington Beachの田中良浩先生宅に一泊し、車を借りて翌日San Diego入りする予定となっている。滞在先はStudio 819。6/6は田中先生の教会で説教し、6/7よりVitas Innovative Hospice Careで11週間の訓練が始まる。最初の四日間はオリエンテーション。16冊が記された参考文献リストも届いた。スーパーバイザーはJohn Gillmann神父で、私を含めてインターン生が6名。教派も年齢も背景も多様なメンバーがピア(仲間)グループを形成し、11週間の体験を共有する。私の過去二回のCPEは病院であったが、今回はホスピス。米国で最先端のケアを学んで来たい。日本と異なり、米国でのホスピスの多くは在宅ケア型である(もっとも日本でも既に1992年に川越厚医師がむさしのメンバーの田坂祥子姉を在宅ケアで看取られたようなケースもある:『安らかな死』教団出版 1994)。ナース、ホームヘルスエイド、ソーシャルワーカー、スピリチュアルコーディネイター(SC)などがチームになって、必要に応じてクライエントを訪問してケアを行う(服部洋一、『米国ホスピスのすべて~訪問ケアの新しいアプローチ』ミネルヴァ書房2003)。

訓練内容としては、スタッフミーティング、クライエントへの個別訪問、訪問記録と逐語会話記録の作成、ピア(仲間)グループによるロールプレイ、ゼミ形式の講演、スーパーバイザーとの面談等が繰り返されてゆくであろう。夜間や土日の当直も交代であるかもしれない。11週間、死と悲しみの現実と向かい合う中で自己を見つめ、感受性と想像力を鍛え、SCとしての技能を磨いてゆく。医療スタッフのチームの中にあって、魂の次元でのケアが私たちSCに求められる専門領域である。クライエントはクリスチャンに限らない。自分の信条を相手に押し付けるのではない。死に行く者、遺される者の悲しみと痛みを自らの存在の中心で受け止め、傍らにあってそれを支えてゆく以外にはない。喜ぶ者と共に喜び、泣く者と共に泣く。それしかない。

いずれにせよ、そこでは援助者自身の死とそれを越えたものの理解が問われるであろう。私自身も50歳を前にしてそろそろ自分自身の歩んできた道を「統合」(エリクソン)してゆく時期にさしかかっていると感じる。与えられたチャンスを生かし、脱皮と成長の機会としたい。


(2004年 6月号)