「読書会ノート」 井伏鱒二 『黒い雨』

 井伏鱒二 『黒い雨』

野上きよみ

 

荻窪をこよなく愛した井伏鱒二の作品を読もうと、『山椒魚』を取り上げたが、彼をもっと知ろうと二ヶ月連続で『黒い雨』を読んだ。以下読書会ノートからの抜粋。

I:人伝、マスコミによって原爆の知識はあったが、井伏氏の誠意ある執筆によって改めて広島の被爆者の心の傷を推し測れて良かった。

F:原爆の恐ろしさ悲惨さについては、写真・絵等に於いて見てはいるが、文章で読むのは初めてである。視覚では無意識或は意識的に目を伏せていた惨事を、文章による記述では読まねばならぬだけに逃げようが無い。核廃絶が叫ばれて久しいが、保有国は発展途上国を含めて増加の一方であるが、それを生産管理する者が絶え間なく相争っている人々であれば、将来は楽観的では許されない。

O:広島のことを思うと心が重くなる。文学者として人間の悲惨な現実に目をそむける事なく、しかし淡々と描いた作者の力量の深さを思う。

H:二十世紀の最も重要な人間の体験を文学したと、米の女流作家が云っているそうだ。原爆の悲惨さをこの様な文学として残しているものがこの作品だけなのだとしたら、読み継がれるべき貴重な作品である。

N:淡々と史実を書く事によって、日常性の中におこる大惨事の及ぼす影響に身がひきしまる思いだ。

(2002年10月号)