「ミネソタの風(3)風の変わる季節を迎えて」 上村敏文

風は確実に秋から冬に向いつつあります。世界の風も、どこに吹き抜けて行くのか予断を許しません。セントポールのイスラムセンターでは、政治、経済、宗教団体の各代表が集まり対話が行われました。『羊たちの沈黙』の主演女優ジョディ・フォスターのようなFBI捜査官も部下二人を連れて、対話に参加していました。本物のFBIは迫力があると同時に、冷静沈着。後半の質問コーナーでも、大半はこの女性捜査官に集中していました。感心したのは、その歯切れ良い答弁もさりながら、誠実さを強く感じた事です。

 アメリカは、当たり前の事ながら、さまざまな背景を持った人達が移民して建国されて成り立っている国です。ミネソタは、ノルウェー系の白人社会である一方、教会が積極的に、アフリカ、アジアの難民を受け入れ援助をしており、あと何年かしたら白人と非白人の比率が逆転するとさえ言われています。

 報道はされませんでしたが、市民が九月十一日にミシシッピー川に集まり、平和を祈る集まり、フローズンキャンドル(灯籠流しのようなもの)がささやかに行われました。アメリカの真の強みは「多様性」にあると痛感した次第です。いろいろな背景を持った人々が、さまざまな意見を堂々と主張する。FBIも単にテロリストを追い掛け回すのではなく、人種偏見を受けた場合に24時間体制で即座に対応する部門を設けているそうです。

 隣人としてのイスラムとはどのような宗教かを学ぶ機会も確実に多くなりました。国務省でも「なぜアメリカは狙われるのか」の勉強会も始まったようです。別の風も確かに吹き始めているようです。