神学生挨拶  多田 哲

今年の四月から来年の六月まで実習させていただくことになりました神学校二年生の多田哲です。

母教会は大阪府にあります豊中教会です。昨年度は田園調布教会で実習させていただきました。大学一年生の時に、以前から興味のあったキリスト教について学ぼうと聖書研究会に入り、教会にも行ってみようといろいろ巡りました。最終的には大好きなバッハゆかりのルーテル教会に通い始め、その年のクリスマスに受洗しました。

受洗を決めたのは信仰の確信を得たということではなくて、聖餐式のパンと葡萄酒を受けたいからでした。こんな動機で受洗して良いものかと思いましたが、神様からの恵みだと感謝しています。その翌年には大きな試練も経験しました。

今年でちょうど十年になりますが、JR福知山線の脱線事故を起こした電車に乗り合わせ、しかも先頭車両に乗っていたことで負傷したことです。事故そのものも衝撃的な体験でしたが、むしろ事故の後のことが辛い経験として残っています。周囲の励ましの言葉が重荷になったり、また取材や事故調査で精神的に苦しみました。体の傷は三ヶ月程度で治りましたが、心の方は長い時間が必要でした。

そんな中、事故の翌年には受洗した近畿福音ルーテルの川西教会が休会(事実上の閉鎖)になり、教会員も散り散りになって、礼拝の場所を失った喪失感を味わいました。近畿福音ルーテルの青年会で釜ヶ崎の喜望の家に訪ねたことがあり、面識のあった豊中教会の秋山仁牧師(現在は宮崎教会)を頼って日本福音ルーテル教会に転籍しました。

今こうして日本福音ルーテル教会の神学生としてむさしの教会で実習をしているのは思えば不思議な心地がします。これらの経験は牧師への召命に深く関わり影響していることですが、私の中でまだどう捉えれば良いか大きな課題でもあります。それでも神様の御心に適うよう、一生懸命やりたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

むさしの教会便り 2015 年 5 月号