むさしのだより「井戸端の戸」 時の輝き

1998年4月。ヴィッテンベルクのルターハウスの入り口の前庭、その芝生の中に、一本の満開の木が朝の陽射しを浴びていた。桃であろうか。「ああ、きれい!」私は思わずつぶやいた。光は、ルターの頃から、この時期の美しさを知っていたのだろう。この日も、一本の木をピンクに輝かせながら天から降り注いでいた。

2000年3月。シリアの荒野の見渡す限りの砂漠の中に、1mほどのアーモンドの木が一本ポツンと生えていて、その枝にはピンクの花が散りばめられていた。私達はその小さな木の周りに円を描いて集まった。そのアーモンドの花はシリアの大地の中で、私たちの輪の中で、輝いていた。

2003年4月。武蔵野の雑木林の中に、満開の桜の淡いピンクがゆさゆさと揺れている。小鳥が飛んできた。雨が降り、病室の窓の外の、その桜が散っていく。

その花に、その時に、主は輝いて。(ど)