2016年4月14日21時26分、熊本地方を震源とする熊本地震がありました。これは始まりにすぎませんでした。16日1時25分本震はやってきました。1回目の地震で安心していた私たちは、まさかそれが余震だとは思いもしませんでした。実はそれだけではありません。15日0時3分に2回目の地震はおこりました。宇城、松橋、八代の人は、大きな地震が3回あったといわれます。震度7が3回もあるなど、誰も予測していないことでした。
1回目の地震の時「しまった」と思いました。東日本大震災の救援活動をさせて頂いた者として何も準備していなかったのです。まさか熊本で地震があるなど思ってもみませんでした。次は南海トラフだと信じておりました。その時は九州から支援物資を買って持っていけばいい位にしか思っていなかったのです。だから「しまった」から始まったのです。
実はそのことは教会のみのはなしではありません。熊本市も県も準備はありませんでした。想定してあったのは「洪水」「台風」「火山」災害に対しての準備でした。ボランティアセンターにうかがったときに「ゴム長靴」と「水かき」を見た時、これは大変なことになったと感じました。私たち熊本県民は地震災害の準備ができておらず、みな地震災害については「素人」なのです。その認識ができるか。それはルーテル教会救援でもいえることです。「できる」なんて思ってはいけない。そこを間違うと、支援活動は自分勝手なものになります。まずは「素人」を自分に言い聞かせました。そしてもう一つ「私たちは被災者なのだ」ということでした。
幸運なことに私には東北に支援活動でつながった方々がたくさんいます。すぐに石巻社会福祉協議会災害対策課に電話しました。「何をすればいいですか?支援活動の流れは?なにを気をつけますか?ゴールは何ですか?期間は?私たちだけではできません。手伝ってください」と。その時教えられたことは「平時が非常時の鏡です」ということでした。まさにそのことが基本です。平時に準備できない、平時にできてなければ非常時には何もできないのです。教会の支援活動も同じです。平時から地域に開かれてなければ、非常時になって開かれた教会にはなれません。だから「できる」などと思ってはいけないのです。まずは「できることから」はじめなければならないのです。そしてサクセスストーリーとなってはならないと思います。
石巻社協の阿部さんに熊本にきていただき、熊本YMCAで講演をお願いしました。彼は「地震の時のボランティアは命の危険があることを理解して、安全靴、切れないズボン、ゴーグル、マスク、革手袋などキチンとした装備がないといけない。」「ボランティアをやるには覚悟が必要だ(にわかボランティアでは危険)。」「初めは物資などの支援、最後は心の支援に変わってくる。特にお年寄りや子供のケアをしないといけない。」と教えて下さいました。緊急支援から自立支援、生活支援へと進んでいきます。最終的には「自分たちで切り盛りできるよう自立の支援をする」のです。そのためには緊急支援の時の関係づくりです。そこで関係がつけられていないと、次の仮設支援には進めません。緊急支援が終わるころ「次は何をしようか」と探さねばなりません。やることはたくさんあるのに、次の支援がみつからない状況がおこります。自立支援、生活支援は仮設からですが、避難所で関係・つながりをつくっておくことです。宗教者ができることは「心のケア」なのです。
さて、「わたしたちは地震については素人なのです」から始まるのが大江教会の活動です。わたしが東日本から学んだことは「いち早くお手上げになろう!」「自分たちだけでやろうとしない!」「ネットワークつながりを用いよう!」「ゴール(目標)を決めてやろう!」「終わりを先に言おう!」「緊急支援から自立支援への見極めが大切!」「次につながる支援を!」「一人の孤独死もださない!」です。そして「平時が非常時の鏡です」からはじめました。
さて、大江教会の動きは「私たちは被災者である」との認識から始めました。自分たちの心のケアを教会の交わりの中でやってまいりましょう。「その次に支援活動です」を心がけました。その中で以下の7つの支援活動をはじめました。
1)ママ・赤ちゃん応援プロジェクト
緊急支援としてオムツ、ミルク、離乳食、おしりふきティッシュ等の配布。ラインやネットを用いて。まずは教会員の赤ちゃんに離乳食を、から始まりました。赤ちゃんとママ応援の必要性を感じ大江教会は「ママと赤ちゃん支援」に支援活動を特化して活動を広げました。すでに17日にはトラック1台分の赤ちゃん応援グッズは教会にありました。鹿児島の伊集院バプテスト教会が鹿児島のスーパーを回って買い集めて下さったのです。また福岡の友達も届けて下さいました。16日にはまだ鹿児島・福岡にはあったのです。今回の支援活動では、フェイスブックとラインは大活躍しました。17日から大江教会は赤ちゃんを連れたママたちで溢れました。200名は来られたでしょうか。オムツ、離乳食はすべてそろっていました。「ルーテルの大江教会に行けば赤ちゃんグッズはすべてそろっている」「大江教会の立野牧師が赤ちゃんをたすけてくださる」そんなラインが流れました。来て下さった方々から情報を得て、お風呂プロジェクトやアレルギーミルクなどの手配。全国のつながりから物資は届けられました。
2)震災Caféプロジェクト
目に見えないストレスはたくさんあります。家に帰れない方々、車中泊の方々。今回の心のケアのテーマは「不安」だと思います。そんな方々に教会Caféを24時間オープンしました。美味しい珈琲とお菓子、そして安らぐ時間。フリースタイルのCaféとし、全国の仲間からお菓子と珈琲などのCaféに必要なものを届けていただきました。今後は不眠不休で支援活動している方々へのCaféも考えています。生ビールのCaféなども計画中。現在教会のCaféは毎日利用があります。地域の方々をはじめ、お母さんたちの集い、コンサート、水彩画教室など。いつも誰かそこでホッとされています。学校帰りの中高生もおり、ちょっとしたCaféそのものです。
3)お片付けボランティア
教会、教会員の家の片づけボランティア。
これは4月中にはすべて終わりました。東北の経験が生かせました。先に先に計画をして、実行すること。教会員のボランティアでやることで、教会員は被災者の方々には安心があります。顔が見える関係における支援は早いです。そのために掃除道具はすでに教会に届けられていました。箒、塵取り、雑巾等は支援物資。先を見ての支援物資のお願いがよかったのだと思います。結果的には支援物資はすべて必要な方に届けました。一部、二次災害のために備品にしてあります。これからは大雨、水害、洪水です。
4)連携プロジェクト
宇城光照寺・阿蘇YMCAと連携しての被災者支援。物資支援。心の支援。
5)南阿蘇被災地・避難所訪問プロジェクト
母がいる避難所を訪問しています。
6)震災心のケア「ママさん赤ちゃん応援」プロジェクト!
「心のホッとコンサート」の実施。
大江教会で出来る事、先を見て必要な事、地域や被災地にむけての支援をしていきます。教会にはイエス様につながる多くのネットワークがあります。
立野 泰博 日本福音ルーテル大江教会牧師
むさしの教会だより7月号より:2016年7月 31日発行