「読書会ノート」 ダグラス原作 映画『聖衣』 ビデオ鑑賞

ダグラス

映画『聖衣』 ビデオ鑑賞

堤 毅

 

時はローマ帝国第二代皇帝の時代。舞台はローマ、エルサレム、カプリ島。主人公はマーセラス護民官(リチャード・バートン)とダイアナ姫(ジーン・シモンズ)、ギリシャ人奴隷デミトリアス(ビクター・マチュア)。

マーセラスはデミトリアスをめぐって次期皇帝カリギュラと競いせりに勝ったが、その為エルサレム守備隊長に左遷される。マーセラスは恋人ダイアナのはからいによりローマに帰ることになるが、ピラトによりイエスと二人の盗賊の処刑を命ぜられる。

一方マーセラスの奴隷となりエルサレムに赴いたデミトリアスは、そこでイエスに出会い従うことを決心する。刑場の十字架の下で彼はイエスの聖衣を手に入れたが、それに触れたマーセラスは苦悶する。カプリ島でマーセラスは皇帝より聖衣を探して焼却すれば、その祟りから免れうると特使として派遣される。再びエルサレムに戻った彼は聖衣を探す途中、弟子のペテロが布教しているのに会いデミトリアスの消息を得た。

カリギュラが即位後、キリスト教徒弾圧が激しくなりペテロに従う老人が眼前で殺されたのでマーセラスは百人隊長と決闘して勝ち隊を追い返し信徒を救った。ペテロはローマまでついてきて欲しいとマーセラスに言ったが彼は自分はイエスを処刑した者であると逡巡する。ペテロは私は主を三度も裏切った…罪深い人こそ救われるのであると諭したので彼は剣も財産も捨てて従う。

ローマに着いた一行の内、デミトリアスは捕らえられた牢獄で拷問を受けるがマーセラスの居場所については口を割らないので、カリギュラはダイアナから訊くために彼女を召喚する。その間に、市内洞窟に潜む信徒がデミトリアスを奪回する。ペテロの奇跡により一命を取り留めた彼を伴って、マーセラスは馬車で脱出を図るが途中ひとり踏み止まった為捕らえられてしまう。

皇帝の前に呼ばれたダイアナとその父。そこへ引き出されるマーセラス。一同の面前で高らかに私はキリスト教徒であると信仰を告白して「共に愛と平和の神の国に参ります」と述べるダイアナの手を取り形場に赴く…。

欧米の宗教映画は概ねキリスト一代記が多いが『聖衣』はダグラス自身が原作(1942)の序で述べている如くおきまりの一代記でなく、キリスト処刑後一世紀のローマ帝国を舞台に普通のキリスト教徒を描いたユニークな作品である。二時間を超える大作(1958 FOX)であるが、イエスを処刑したエルサレム守備隊長が聖衣と信徒とに依ってキリスト教に入信してゆくのがよく描かれている。

読書会では、奴隷から高官まで広くキリスト教を布教した信徒達があってこそ現在の私達があるのだという所感が中心だった。

(99年 2月)