「読書会ノート」 藤原正彦 『国家の品格』

 藤原正彦著   『国家の品格』

豊田静太郎

 

「武士道精神《と聞くと身構えるが、「惻隠の情《と聞くと心和む。新聞の論評で知っていたが、読書会のテキストに選ばれたので購入し、速読する。藤原氏の云っているところの大部に大きく共感した。毎日の生活の中のことであるが、電車の中で幼児同伴の女性を立たせて優先席にいぎたなく座っている無精髭の若者たち、格差拡大を論難する新聞の裏のページで堀江ナントカ、村上ナントカの上可解な行動記事等々。かっての日本ではこれらは人間として恥かしいことと教えられてきた。イワシの昼食に満足し、給与の大半を夫人の関係する学校に寄附していた経団連の会長、郊外の陋屋に居住しながらJALに対抗して社業に懸命に努力していた全日空社長がいた、かつての日本。藤原氏は欧米の「論理と合理《ではなく、我が国古来の「情緒と形《にすべきと説いているが全く同感。会の席で、「カルヴァンの予定説《等に対し、著者の識見を疑うとの異説も出された。記事が講演記録をもととしたことにより、なおまた数学者である著者の表現方法によるため等と思われる。特に、トシ、体調低下などで怒りっぽくなってきている人に一読をおすすめしたい。

(2006年7月号)