『むさしの教会とシンボル』 文と絵 青山 四郎
(むさしの教会文庫 1980年 4月20日発行)
むさしの教会元牧師の青山四郎牧師による文章です。
「むさしの教会に出入りしておられても、意外に皆さんが御存知ないことが多いのではないか
と思いますので、気付いたことを書きならべてみることにしました。御参考になれば幸いです。」
説教台と聖書朗読台に掛けられている、布の色に気がついておられますか。これは牧師先生のストールの色も同じで、教会暦によって色が変わります。これには教育的な意味もありますので、色のシンボルを説明しておきましょう。
「紫」、日本や中国では、昔から紫は高貴の色とされていました。例えば、「紫極」と言えば王宮のことですし、「紫宸殿」と言えば天子の御殿のことです。不思議なことにキリスト教のシンボルでもこの色は王者とか王権を示すのに用いられ、父なる神のしるしにもなっています。けれどももう一つの大切な意味は、悲しみと悔い改めです。
教会の色としては、待降節 Advent と四旬節 Lent に用いられます。待降節では、クリスマスを迎える心の準備のための悔い改めを示し、四旬節では、主キリストの苦難をしのび、悔い改めて、復活日の喜びを迎えるための、悲しみと悔い改めを示しています。牧師が首からさげる紫のストールには、図のようなイバラの冠と十字架の釘のシンボルがついています。イエスの受難を現しています。
「白」、これは魂の清め、聖化等を示す色です。詩編51:7には「わたしを清めて下さい、わたしは雪よりも白くなるでしょう」とあります。昔から受胎告知を描いた画家が、マリヤの着物を純白で描いているのも、そのためです。初代教会の聖職者たちは、白い衣服をつけていて、今でもそれは伝わっています。
教会暦の色としては、喜びを現すものとされています。そこで降誕祭 Christmas と、それに続く降誕後主日は白で、クリスマスイブの12月24日午後3時から紫が白に変わり、1月6日の顕現日まで続きます。それから復活日 Easter とそれに続く復活節、主の昇天日、三位一体主日、全聖徒主日、主の母マリヤの日(受胎告知日・3月25日)、変容主日(四旬節直前の主日)等に白を用います。つまり大きな祝祭日の多くは、白ということになります。
「緑」、これは植物の色、春の色です。冬の寒さを乗り越えた春の勝利、死を乗り越えた生命の勝利のシンボルで、福音の力、希望をも意味します。そこで、顕現節の間と、三位一体主日の次の日以降待降節(アドベント)の前までが、この色になります。この期間はキリストの地上生活とその教えが聖書日課に含まれますので、福音の勝利と永遠性を意味していると言えます。
「赤」、これは血の色で、教会では殉教者の流した血を意味していることは、会堂の入口の赤い扉のところで説明しました。その他火を現すこともあります。ですから教会暦では、多くの人々の流した血によって築かれた教会の大きな出来事の日に、この色を用います。先ず枝の主日、これは本来紫ですが、昔から堅信式が行われる日でしたから、もし堅信式があれば赤。それから聖霊が火のように降った聖霊降臨祭 Pentecost 。宗教改革記念日(10月31日)にも赤が用いられます。その他使徒たちの記念日、牧師の按手式、献堂式等にも用いられます。
「黒」、これは悲しみの色です。教会によると、イエスが十字架にかけられた受苦日(聖金曜日)にはこの色が用いられ、聖卓の上のものは取り除かれ、十字架は黒いお棺の被いをかぶせてしまうところがありますが、この教会では、黒はあまり使っていません。
このように、いくつかの色が礼拝で用いられていますが、昔からの習慣によるだけのもので、特別にこうしなければならない、というむづかしいものではありません。しかし一つ一つの意味がわかってくると、礼拝に出席する度に、いろいろのことを学び、礼拝が豊になるのではないでしょうか。