「千人礼拝をめざして」 日本福音ルーテル大江・宇土教会  立野 泰博

 聖地?熊本に35年ぶりに帰ってきました。九州学院を卒業し、神学校に入学し、たくさんの回り道をして、やっと故郷に帰ることができたという感じです。「故郷に錦を飾って」といわれましたが、錦を飾るどころか開けない段ボールをどっさり持って帰ってきました。
 さて、熊本に帰ってきて、一番衝撃を受けたのは「水」でした。熊本の水はこんなにおいしかったのかと驚きました。しかも水道水でさえこの美味しさです。この水を飲んですぐに、神学校の寮を思い出しました。ルター寮に入ってはじめて東京の水を飲んだ時のあの逆の衝撃。これは水ではないと思ったこと。薬だなと文句を言ったことを思い出したのです。自分が生まれ育った阿蘇には白水水源があり、水は美味しいものと信じていました。しかしそれは、神様の大きな恵みだったのです。
 35年ぶりに飲んだ熊本の水道水は大江教会の蛇口からでした。いやあ、絶品でした。これが本当の「命の水」なのです。教会にたえず流れている水こそ、イエス様そのものです。イエス様は「誰でも渇いているものは私のところに来て飲むがよい」といわれました。イエス様のくださる命の水はどんな味がするのでしょうか。それは、やさしい味でしょうか。なつかしい味でしょうか。それともたまには炭酸水のような弾ける味でしょうか。どんな味であっても、それが天国の味にはかわりありません。
大江教会に赴任させていただき3ケ月がすぎました。もう10年もいるような気持ちです。それほど密度の濃い時間を過ごさせていただきました。6月7日に、愛するT兄、S姉を天国におくりました。1日にお二人の方の臨終に立ち会わせていただきました。お二人ともそれぞれの人生を生き抜いた生涯でした。家族のみなさん、教会、地域の方々にどれだけ愛されておられたかを知る時でした。
 Tさんは家族に囲まれ「パパ、ありがとう」という感謝を確かに聞かれての召天でした。人間は最後まで耳が聞こえるといいます。その耳で「ありがとう」の言葉に送られながらの旅立ちでした。Sさんは、ご主人をはじめお子様、お孫さんに囲まれての召天でした。大好きなおばあちゃんの旅立ちでした。お孫さんたちの号泣のなかで旅立っていかれました。どちらも素晴らしい天国への凱旋でした。
 私の牧師人生の中で、同じ日にお二人を天に送るのははじめてです。日程をやりくりして、お二人とも望むかたちで神様が葬儀の場所を用意してくださいました。Tさんは大好きな九州学院のチャペルで、Sさんは教会の聖さん礼拝に参加して後、告別式となりました。
また、神様は赴任したばかりの私にも大きな恵みをくださいました。こんな私ですから、大江教会赴任に際して「大江教会で千人礼拝をします」と宣言しました。まだ平均40名ですが。神様に祈るならできるだけ大きく祈ろうと思ってのことでした。教会の皆さんには「御心にそった祈りは必ず聞かれます。祈りましょう」とお願いしました。
実はこの2つの葬儀、主日礼拝で1450名の方へ御言葉を語ることができました。すぐに、祈りは聞かれ、幻をみせていただきました。神様はさすがです。そしてまた大きなビジョンができました。次の祈りは千人の主日礼拝を実現することです。大江教会と九州学院ブラウンチャペルがあれば、そして九州学院とこの地域があればすでに卒業生、学生、家族をあわせて何十万という求道者はそこにおられるのです。日本福音ルーテル教会始まって以来の1教会千人礼拝を夢みています。これくらい大風呂敷きを広げた方が元気でますから。聖地熊本から、むさしの教会のみなさんを覚えて祈っています。

(むさしの教会だより 2012年 9月号)