そよ風  秋田 淳子

晴れた日の朝、アパートの窓を開けると目の前に広がる大家さんのダイコン畑が朝露でキラキラと輝いています。その畑と隣接するのは、果樹のキウイ棚。ダイコンは自らを寒さから守る為に、その葉を地面に扇状に伏せる様に広げ、キウイはすっかり葉を落としているものの、そのうねる様な枝っ振りが、この空間を引き締めています。

その様子を眺めていると…ダイコン畑の中で何かがモゾモゾと動いているのです。よくよく見てみると、10羽程のヒヨドリが葉をついばんでいます。すると今度は、何処からともなく2羽のハトがキウイ棚の下に現れ、ポーポーと鳴きながら地面を突っついています。鳥たちの忙しい朝の姿。それがなぜか私には、イエス様のもとで働く弟子や女性達と重なって見えてきたから…不思議です。

そして次の瞬間、「カァー」という鳴き声と共にカラスの飛ぶ影が地面を横切りました。その時、私の中に何かがかすめたのです。まもなくして、私たちは喜びあふれるイースターを迎えます。しかし、その前に深い悲しみの受難週を過ごさなくてはなりません。あたかも、そのことを象徴するかの様な朝の光景のひとときでした。

むさしのだより 2013年3月