編集後記 「雪の結晶の中に」 秋田 淳子

8年前の大雪となった日に、私の父は天に召されました。つぎの前夜式の日、教会の玄関の前でとめどもなく降ってくる雪の中で綺麗な結晶となった一粒が、私の黒いコートの肩に舞い降りてきました。生れて初めてこの目で見た雪の結晶は、静かにゆっくりとゆっくりと…溶けて吸い込まれていってしまいました。まるでそれは、この世から去っていく父の姿そのもののようでした。

8年後の今年の大雪の日、家の庭先でふと気がつくと肩の上に、綺麗な形の結晶の雪が降ってきていました。次から次へと降ってくる雪が溶けていく中でその結晶はしばらくの間、静かに肩の上に残っていました。私たち家族の様子を父が見に来たのでしょうか。そんな思いがしてなりませんでした。

つめたい雪の結晶の形の中に、神様の繊細な業を見ました。そのひとのひとつが、もしかしたら神様の想いなのかもしれません。言葉なのかもしれません。そして、私たちの内に静かに溶け込んでいくのです。