「そよ風」 秋田淳子

夏の熱い陽射しが和らいできました。そんな中、セミたちが最後の力を振り絞って鳴いています。日本では、古くからセミは人々から愛でられ文学や詩歌にもその鳴き声が登場します。しかし、西欧に於いてその鳴き声は、人々から唯のノイズ(雑音)としか受けとられていないと聞いたことがあります。

幼い頃、夏にセミの脱け殻を集めるのが好きでした。あの半透明でやさしく手に持たないと一瞬にして粉々になってしまう繊細さに、子どもながらに魅了されていたのでしょう。そして、何よりも羽化するとき、からだ全体が殻になってはがれていってしまうという、フ・シ・ギ・・・。

私たちも人生の歩みの中で…年齢を重ねながらの精神的羽化、仕事の経験に伴っての実力の羽化を繰り返しながら成長していきます。そして、信仰者としての羽化…。それは祈りと讃美の積み重ねによるもので、その抜け殻は透明でキラキラと輝くものなのかもしれません。

(むさしのだより 2011年9月号より)