~読書会から~ 羽田 圭介著『スクラップ・アンド・ビルド』 仲吉 智子

「スクラップ・アンド・ビルド」とカタカナの題にとまどいながらも、少しばかり期待して読みました。英語の意味を調べてみると、「工場設備や行政機構などで、古くなって使いづらい設備や組織を捨てて、新しい設備や組織を作ること」とありました。

テーマはご多分に漏れず高齢化の進む中で社会問題にもなっている、介護が取り上げられていました。孫と祖父と母親という登場人物ですが、あまり重い話にならず孫の視点で書かれています。会社を辞め、アルバイトをしながら職探しをし、祖父の世話もしながら、また若者らしくデイトも楽しみながら自身の肉体も鍛えつつ日々を送っているのですが、孫には理解しがたい祖父の行動を距離をおいて見ています。「早くあっちへ行きたか。死にたか。」という祖父の思いにどうしてあげられるのかと考えたりもします。

母親としては自分の父親なので、これ以上手が掛からないようにと祖父の甘えに罵声を飛ばしながら刺激をしています。今介護と一言でいいますが、それぞれの置かれている状況が違い、介護制度も細分化されとても利用しにくいと聞きます。介護する側の者が重労働にならないようにということもあるでしょうが、ベストのケアを受けるには、お金もかかってくるのです。私が主人を在宅ケアを利用して見ていた頃とは、随分制度も変わってきたように思います。あの頃は制度もまだゆったりとしていて充実したケアを受けられたと思います。
さて、本に戻りますが、会社を辞めてから一年後には新しい仕事が決まり家を出ることになり、祖父がたよりにしていた孫の旅立ちで、祖父もある程度自立し、自分で出来ることはやる生活になるのではないでしょうか。
読み終えて題名の意味が、わかったような気がしました。