不思議な事々 高橋 光男

2013年5月22日
 不思議に思うことはいっぱいある。ここでは生物が示す不思議なことを思う。私たちに馴染み深い魚のサケ。サケは川で卵から孵化し、川を下り太平洋で4年ほど過ごし、再び生まれた川をさかのぼって産卵する。産卵を終えた親は、そこで死んでしまう。
 親サケの死後に、卵から孵化した稚魚には親から生きるすべを学ぶチャンスはない。何を食べるのか、どのように川を下り、太平洋でどのように生きていくのか、そして生まれた川に戻るにはどうするか等々、何も学習してない。しかしサケは何かに導かれて再び生まれた川に戻り、産卵しその一生を終える。ここに不思議がある。
 ウミガメの産卵についてはニュースでよく報じられる。母親ガメは卵を産むと海に戻って行ってしまう。卵から孵った子ガメ達はいっせいに砂をかき分けて出て来て、海に向かう。海へ向うことも、どんな食べ物を摂るか、大海原でどう生きるか等々、親ガメからは何も学んでいない。ウミガメにもサケと同じような不思議がある。
 
ファーブル昆虫記を開いてみる。るりじがばち、はきりばち、どろばち等々のハチが観察されている。これらハチの母親は、泥や木の葉、等を使って、枯れた葦の茎、カタツムリの殻、石の下の隙間、等に産卵ための小部屋を複数個作る。小部屋の中に卵を産み、幼虫に成った時のために蜜や、花粉や、捕捉した蜘蛛を置く。小部屋は泥や、小石や、木の葉などで閉ざされる。
 卵から孵った幼虫は、蛹に、やがてハチになり巣立っていく。このハチたちは、親蜂から小部屋の造りの方や、餌の取り方等々を学んでいない。それでもやがて母親と同じ事を繰り返す。ここにも不思議がある。
 いずれの不思議な事は、生物には特有の本能があるから起きると言える。この本能がまた非常に不思議なものである。神から与えられたものと言うほかはない。  
 神は烏を養い、野原の草も花で装ってくださる。神はサケや、ウミガメやハチたちにも親について学習しなくても生きるすべを用意してくださっている。