四旬節(受難節)を学ぶ 青山四郎(むさしの教会元牧師)

 

受難節の色

今年の聖灰水曜日は○月○日(水)で、この日から四旬節(受難節)にはいります。四旬節(受難節)にはいると、牧師先生のストールや説教壇の垂布や聖書台のブックマーカーが紫色になります。紫は高貴な色ですが、同時に昔から悲しみや悔い改めの色でもあります。ですからクリスマスやイースターの喜びを迎える前に、その備えとしてざんげをし、悔い改める季節として、教会暦に待降節、四旬節(受難節)が設けられ、その季節の色として、紫色を用いるようになりました。

四旬節(受難節)は四十日あります。その間に六つの日曜日がありますが、日曜日は主の復活の日になりますので、これを除きます。ですから今年は○ 月○日が復活日になります。昔の人々は、イエスが荒野で四十日間断食されたのに習ったのでしょうか、此の季節は断食をしたり肉食を断ったりしてざんげと祈りに過ごし、イエスの十字架の苦しみをしのびました。私たちも昔からあるシンボルを学んで、イエスの苦難と復活の喜びを思い起こしましょう。

 

シュロ

これはイエスがロバに乗ってエルサレムに入城された時、しゅろの枝を打ち振って群衆がイエスを迎えたことを思わせるシュロの葉です。

 

葡萄と麦

ブドウと麦はいろいろな意味を持っていますが、ここでは最後の晩餐で弟子たちに配られたパンとぶどう酒のシンボルです。

 

革袋と銀貨

これは銀貨の入った財布とお金です。イスカリオテのユダは祭司長たちに銀貨三十枚で、イエスを売り渡してしまいました。

 

水差しと水盤

ピラトは「十字架につけよ」と叫ぶ群衆の声に、水を取り手を洗って「この人の血について、わたしは責任がない」と言い逃れをし、十字架につけるために、イエスを引き渡したとマタイは記しています。これはそのときの水差しと水盤です。

 

ニワトリ

このニワトリは二度鳴きました。ペトロはイエスさまが「お前はニワトリが二度鳴く前に三度わたしを知らないと言うであろう」と言われたのを思いだし、「あんな人は知らない」と言ってごまかしていた自分が恥ずかしくなって泣きました。

 

イバラの冠と三本の釘

イバラの冠と、十字架の上で両手と足に打ち込まれた三本の鉄の釘は、私たちのために死んで下さったイエスの苦しみのきびしさを、最も痛切に示しています。

 

十字架

受難節に用いられる十字架で、端が尖っています。これは冠のイバラのとげや剣や槍の先の与えた苦しみの十字架と言えるでしょう。

 

罪状書き

兵隊たちは、イエスを十字架につけ、頭の上に「これはユダヤ人の王ナザレのイエス」と書いた罪状書きを掲げました。この十字架の上の字は、ラテン語で書かれた “Jesus Nazarenus Rex Judaeorum”の頭の文字です。

 

神の小羊(アグヌス デイ)

聖壇の正面に「十字架を負う神の小羊」のレリーフがあります。彫刻家山本常一氏の作品ですが、これは私たちのために十字架を負われた小羊イエスの受難と栄光の姿を示す有名なシンボルです。

 

栄光の十字架

これは栄光の十字架で、復活のシンボルです。背後には、朝の太陽が昇っています。これはイエスが死からよみがえった、神の力のすばらしさを示しています。十字架は終わりではなく、始まりです。

 

追記

復活日は毎年違っています。これの数え方は、春分後の最初の満月後の第一日曜日が復活日になります。昔のユダヤ暦によるものです。

 

(むさしの教会だより 1984年4月号より)