教会と歴史(4) 石居 正己




むさしの教会元牧師、ルーテル学院大学・神学校元教授(教義学、キリスト教倫理)の石居正己牧師による受洗後教育講座です。




(承前)ところが武家社会とされる江戸時代でも、侍は日本全体の人口からすると、7パーセントから10パーセント位であったといわれています。明治になってからのいわゆる士族の数もそのようなものです。もちろん江戸時代の侍は、もともとは職業軍人だったわけですが、それだけではなくて、政治はもちろん官僚機構全体を抑えていたし、当時の歴史全体がその影響下にありました。そしてそれはせいぜい人口の1割ばかりの人間がやっていたことです。

 江戸の末期にはことに町人がずいぶん勢力を持つようになりましたが、人口の大多数の農民はどうしていたのか、資料がありません。農民の思想が文書に現れるのは、ずっと新しい二宮尊徳あたりのことであって、その考えもやったことも、殆ど全く文書にはなっていないのです。(続く)

(1995年 7月)