スオミの夏(1)   ヨハンナ・ハリュラ

 スオミの自然と四つの季節は、どれも美しく素晴らしいものです。いつもそのことを考えると、世界の造り主に感謝したくなります。今回は特にスオミの夏について、私の思い出と一緒にお話ししましょう。

 スオミの夏は、5月の終わり頃から急にはっきりと始まります。この時期は、森に咲く白いアネモネやリンゴの花、また道ばたに咲くたくさんの花でたいへんきれいです。同じ頃、学校の卒業式がありいろいろな人たちの夏休みが始まります。スオミはそれから約2ヶ月半の間‘夏の国’あるいは‘夏の家の国’へと変わります。都会では、夏になると通りにカフェがオープンしたり、市場や催事やお祝いがいっぱいあります。また、都会に住む人たちの多くは田舎の湖岸に夏の家を持っているので、夏になると田舎は冬と違ってたくさんの人で賑やかになります。

 そこではいろいろなお祝いやパーティーがありますが、一番のお祝いは、6月22日頃の金曜から日曜日に行われる“JUHANNUS”夏至祭です。その日、湖岸のあちらこちらで大きなファイアーがたかれ、そのまわりで家族や友達と一緒にゲームを楽しんだり歌を歌ったり、ソーセージを焼いたり、おしゃべりをしたり・・・のんびりと過ごします。

 子どもの頃、毎年夏休みに両親や兄弟と静かな湖の岸辺にある夏の家に行きました。私の生まれた年に建てられたこの夏の家は、私にとって懐かしい場所でもあります。まわりにはおもしろい建物があり、その中の古い建物の中で遊んだり歌ったりしました。また、何本もの森の道があって、道端にあるブルーベリーを採って食べたりして子どもにとっては楽しい場所で私は大好きでした。しかし、夜になるとその道は真っ暗になり少し恐くなります。頭の中にいろいろな恐い物の姿が出てくるので、急いで走って帰りました。他にも道はありましたが、いつもその同じ道を歩きました。このことは私の心の大切な経験になったし、それによって一人で何かをすることを怖がらないなど、いろいろな特別なことを学びました。今でもその場所は、昔と変わらずにすばらしい所です。その道を歩いたり建物を見ていると、いろいろな思い出がよみがってきてとても懐かしくなります。

 私の頭や心の中には、このような日常とは別の‘夏の世界’があります。私の夏の世界はいつまでも変わらないでいて欲しい、でも、スオミの夏は前とはだいぶ変わりました。私も年をとって変わりましたが、思い出は今もこれからもずっと私の中にあります。

(2001年 6月号)