ミルトス~神殿再建   池宮 妙子

「すると、ミルトスの林の中に立っている人が答えて、『これらは地上を巡回させるため、主がお遣わしになったものだ』と言った。彼らはミルトスの林の中に立っている主の御使いに向かって答えた。『わたしたちは地上を巡回して来ました。地上の人々はすべて安らかに暮らしています。』」(ゼカリヤ書1章10-11節)

「イスラエルの人々は第七の月の祭りの期間を仮庵で過ごさなければならず、これを知らせ、エルサレムとすべての町に次のような布告を出さなければならない。『山に行き、オリーブの枝、野生オリーブの枝、ミルトスの枝、なつめやしの枝、その他の葉の多い木の枝を取って来て、書き記されているとおりに仮庵を作りなさい。』」(ネヘミヤ記8章14b-15節)

 BC538年、ペルシャ王キュロスに解放され、エルサレムに神殿再建を命じられたユダヤ人は、ソロモンの栄華を再興する希望に燃えて帰国しました。が 17年間工事は中止。BC520年のある夜に預言者ゼカリヤは、谷底ミルトス林の中に立っていた主の御使いに会い、ヤハウェの神殿再興を決意しました。聖書の中でミルトスは喜びと平和の象徴になっています。

 地中海地方原産の3~6mの常緑低木。芳香を含む葉の元に、夏には甘い香りを漂わせた白小花がたわわに開花します。葉,実と共に香水、香油、粉状の香り袋用として、また茶用として利用。ユダヤ人は聖所の集まりの装飾に花を用い、ローマ・ギリシャ人は業績を讃えて花環に使ったのが「祝いの木」の出所だと思います。

 現在南欧では庭園に植栽され、イギリス、ドイツでは花嫁の花飾りに使われます。日本渡来は明治末(?)。西日本で育ちます。小石川の植物園の鉢物は今が満開です。

(2000年 7&8月号)