ヒソプ 石垣 通子

 聖書に出て来るヒソプは『ハナハッカ』ではないかと言われる。イスラエルでは、潔めの表徴として儀式に用いた。当時、イスラエルの人々は年に何回か行われる宗教儀式のために野生のヒソプを採集すると、糸でしばり束にして軒下にぶら下げて陰干しにして蓄えて使用した。また旧約に出て来るものと新約に出て来るのは別種の植物という説もある。

 聖書には何カ所か大切な場面で登場する。まず過ぎ越しの祭の時、小羊の血をヒソプの束に浸し、鴨居と入口の柱に塗る(出エジプト12:21-27)。またイエス様が十字架の上で亡くなられる直前にヨハネによる福音書によると、酸いぶどう酒を含ませた海綿をヒソプに付けてイエスの口もとに差し出したとある(19:29)。もしハナハッカだとするとせいぜい30~50センチ位だし、茎も弱いので、マルコによる福音書のようにヒソプの茎をさらに葦の棒につけてイエスの口もとに届くようにしたのかも知れない(15・36)。