いなごまめ   石垣 通子

 エジプト、アラビア、パレスチナなど地中海東岸に古くから栽培され、所によっては野生化し、高さが10mにも達する常緑樹。雌雄異株で花は小さく、黄または赤で、さやと種の用途は広い。褐色で完熟していないさやを集めて圧搾すると、甘い汁が得られ、しょ糖が40~50%含まれており、飴の材料になる。又この汁に果物を漬けて保存したり、アルコール 醸造の原料になる。種の薄い皮を除くと純白の固い胚乳が現れる。これを粉末にして水にとかすと糊になり、織物の糊づけに使用される。又練り込んで丸薬を造ることもある。さやのしぼりかすは家畜の飼料となる。実生でさやを収穫するには20年を要するが、接ぎ木が出来る。

 いなごまめは、聖地に最も古くからあったものの一つ。旧約には記されておらず、新約ではイエス様の有名なたとえ話「放蕩息子の物語」に出て来るだけである(ルカ15:11~32)。

「彼は豚の食べるいなご豆を食べてでも腹を満たしたかったが、食べ物をくれる人はだれもいなかった。」(ルカ15:16)

(1995年 5月号)