アネモネ  石垣 通子

 地中海沿岸原産。今では世界中で栽培されている。多くの学者はこれを野の花の第1候補にあげている。早春のイスラエルでは一面深紅色や紫色のカーペットを敷きつめたようになる。

 原典のギリシャ語は、(Krinon)又は(Shoshanim)はユリの総称名であり、ユリ科あるいはユリ属に限らず、語義を広くとる用法は各国に行われている。例えばスイレンは(Water Lily)。

野の花がどのように育つのか、・・・今日は生えていて、明日は炉に投げ込まれる野の草でさえ、神はこのように装ってくださる。(マタイ6:28~30、この「野の花」は文語では「野のユリ」となっている)

 野の草が一夜にして枯れ、燃料と化する情景は、アラビアの砂漠から吹いてくる熱風で、たちまち花が凋み、草が枯れるパレスチナ地方では珍しいことではない。燃料という観点に立つとアネモネはあまりに小さい。そこでもっと大きなグラジオラスを連想し、これを野の花の候補とした学者もいる。

(1994年 6月号)