編集後記 「空白の時間」 秋田 淳子

今から14年前の夏に、私は西ドイツとフィンランドに住む友人に会いに一人旅に出かけました。それは、新たに多くの友人を得る実りある旅となり、帰国してからは辞書を片手に賑やかな文通が始まりました。しかし、11年前に父が他界しその傷愴感から積極的に人と関わることに煩わしさを感じるようになった私は、次第に彼らに手紙を書かなくなりました。

そして、年月だけが過ぎていってしまったのですが最近彼らのことが思い出され、特にその中の一人の人の手紙は毎日開ける引き出しの中にずっと入れていたので、特に気になっていました。でも、今さら手紙を書く切っ掛けや自信もなく・・・。

ところが今日、引き出しの中のその人から手紙が届いたのです!懐かしい文字、同じ住所、いつもの書き出し。何よりも、相手に対するその人のやさしい心遣いは昔のままで、今までの空白の時間があたたかく包まれていくようでした。

何らかの理由で神様から離れてしまっても、神様はいつも変わらない姿でいてくださる、神様の側から私に近づいてくださる・・・それと重なる体験でした。

(2001年 7/8月)