「読書会ノート」 吉田 満 『鎮魂戦艦大和』 新潮社

吉田 満 『鎮魂戦艦大和~戦艦大和の最期より』 新潮社

堤  毅

 

私は学卒の主計科士官として南方海域の艦艇勤務で九死に一生を得た一人です。自分の乗艦が佐世保軍港ドック入渠中に、大和と同行した生き残り三隻の駆逐艦の無残な姿を目前にし、その戦の苛烈さを容易に推し量ることができた。

先ず「本書の片仮名混じりの文語文とふんだんに使われている海軍の艦船用語のため、その解説がなされなければ十分な理解は困難」との感想がなされた。

然し「この本は内容といい文章といい戦記作品の『古典』とも称すべき名著である。普通の口語文に直さずに読み継がれるべきだ」との発言が印象に残った。

又「この戦闘は苛烈を極め、全く味方戦闘機の援助のない水上艦艇の脆弱さ・悲惨さを露呈した。大和沈没後まで執拗な攻撃が繰り返され、あそこまでやる必要はなかったのではないか」との意見もあった。

関連してサイパン陥落時和平を画策された高松宮の「日記」にもふれた。

敗戦による価値観の大変換が行われた以上戦後50年の長い平和時代を経た現在、戦時思想を批判するのは正鵠を失うのではあるまいかというのが私見です。

最後に著者の初版あとがきを引用したい。
【戦没学生の手記などを読むと激しい戦争憎悪が専ら取り上げられているが、このような編集方針は一つの先入主にとらわれていると思う。–戦争に反発しつつも、生涯の最後の体験である戦闘の中に、些かなりとも意義を見い出して死のうと心を砕く者-このような昂りをも戦争肯定と非難する人は、それでは我々はどのように振る舞うべきであったのかを、教えていただきたい。–戦争を否定するということは、現実にどのような行為を意味するのかを教えていただきたい。後略】

何度読んでも身の引き締まる思いのする本の一読を特に若い人にお勧めしたい。