説教「虹のコラボレーション」 大柴譲治牧師

創世記 9: 8-17

はじめに

私たちの父なる神と主イエス・キリストから恵みと平安とがあなたがたにあるように。

2006年度の年間主題:コラボレーション(協働)

本 日は総会礼拝で、今年の年間主題についてみ言葉に思い巡らせてゆく礼拝です。総会資料の34-35ページに書かせていただきましたが、今年は様々な賜物を 持った人々が協力して働いてゆくという意味でコラボレーション(協働)という主題を挙げさせていただきました。イメージとしては虹をイメージしていただき たいと思います。

特にこの教会堂が昨年の耐震補強工事とリフォームを経て、ノアの箱船を再現することができたことも併せ考えているのです が、箱船を降りたノアたちが見たものは神さまとの永遠の契約を表す大きな虹でした。この教会は、神との契約を思い起こすための場所でありますから、それは 虹を見上げる場所でもあると申し上げることができましょう。この礼拝堂の外壁にノアの箱船から出たつがいの動物たちが空を見上げている姿が描かれています が、それは虹を見上げているのです。虹は七色に輝いています。この七色のコラボレーションということを特に今年は覚えたいのです。

ノア契約の二つの特徴

創世記が記すノアの箱船の出来事の中で、「洪水」が人間に対する神の怒りと悲しみを表すしるしであったとすれば、「箱船」は神さまの守りと支えと導きとを表し、「虹」は人間に対する神の赦しと祝福、神の慰めと喜びとを表すしるしであったと理解することができましょう。

こ の虹のしるしが与えられる「ノアの契約」は、実は旧約聖書に出てくるそれ以外の様々な契約と大きく異なっている点がいくつかあります。第一は、アブラハム においても、モーセにおいても、他の契約はイスラエルの民の信仰の告白が片側で前提とされているのに、このノアとの契約についてはそれがないのです。ただ 神が一方的に、先行する恩寵として、契約のしるしを天に示してくださる、それが特徴的です。

第二に特徴的な点は、この永遠の契約のしるし が、すべての人が見上げることができるしるしであるという点です。否、人間だけではない。それは、この教会の外壁にあるように、すべての被造物が見上げる ことができるしるしです。ノアの契約は生きとし生けるものすべてと神が結ばれた永遠の契約だという点が、イスラエルの民を対象としたと他の旧約聖書に記さ れた契約とは異なっています。そしてそれゆえそれは、すべての民、すべての被造物のために与えられた主イエス・キリストの十字架における新しい契約を指し 示していると申し上げることができましょう。

虹は天と地とを結ぶ架け橋でもあります。永遠の世界とこの儚い地上の世界とがつながっていると いうことを表すしるしなのです。虹は、様々なこの世の混とんと不協和音と暴虐と不条理にも関わらず、天と地の間にはそれによっても揺らぐことのない和解が あり、調和があり、深い絆があるのだということを示すしるしなのです。

虹を仰ぐ時、私たちは不思議な力をそこから与えられることを知ってい ます。それは、どのような困難にあっても再び勇気を抱いて立ち上がってゆくことができるような力です。そしてそのような虹があることを指し示すために神さ まはキリストにおいて私たちを召し出してくださったのです。あのステンドグラスが虹色に輝いているように、「虹」は私たちに神のご臨在のしるしであり、神 による十字架の和解のみ業、十字架の赦しと解放のみ業を指し示しています。

教会讃美歌351番

「虹」についてぴった りの賛美歌があります。今年の主題賛美歌と呼んでもよいかと思います。それが先ほど「み言葉の歌」として歌った教会讃美歌351番です。「賛美歌は会衆に よる説教である」とルターは言いましたが、確かにその歌詞を深く味わってみるだけで、それが豐かな説教となっていることが分かります。もう一度歌詞を噛み しめてみたいと思います。

1.われを捉えたもう 神の深き愛よ
弱きわが命を 君に捧げなば
豐かにならん。

2.ひとりたどる道を 照らす主の光よ
小さきわが心に 光満ちあふれ
輝きまさん。

3.雨に悩む時も 虹は彼方にあり
神の誓いたもう きよき喜びの
あしたを待たん。

4.きみの十字架にぞ 我はすがりまつる。
塵に返る身にも 尽きぬ命をば     与えたまわん。

こ のような恵みを味わいながら、一人ひとりが異なる色合いを持ちながらも、七色の絵の具を混ぜると灰色になってしまいますが、そうなるのではなく、互いに反 発し合うのでもなく、赤橙黄緑青藍紫(せきとうおうりょくせいらんし)、赤色、オレンジ色、黄色、みどり色、青色、藍色、紫色という七色の輝きを一つに束 ね合わせてゆくことができればと思います。

虹は透明な光がプリズムを通る時に屈折することによって、波長によって屈折率が異なるために、重 なっていた色が分離して虹色に見える現象です。雨上がりの空に陽光が射すことによって太陽の反対側に虹が出現するのです。透明な光がかくも豐かな色彩を内 に含んでいることに驚かされます。神さまの恵みはかくも味わい深いのです。当たり前と思われる日常生活にこのような虹色の恵みの光が注がれていることこ そ、私たちが思い起こすべき事柄なのでありましょう。

虹のコラボレーション~「地上の虹」

「虹」は神さまとの永遠の 契約のしるしです。しかも不思議なことは、神さまご自身がその虹を見て「神と地上のすべての生き物、すべての肉なるものとの間に立てた永遠の契約を心に留 める」(思い起こす)と15節と16節で二度も繰り返して語っていることです。そこに神の決意の強さが示されているのだと思います。

「雲の中に虹が現れると、わたしはそれを見て、神と地上のすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた永遠の契約に心を留める。」(9:16)

天 の父なる神はすべての人々の上に等しく虹の橋を架けてくださるお方であるのです。そのように、私たちが「虹のコラボレーション」ということを考える際に は、この大地も含め、すべての生きとし生けるものとの和解、ハーモニーということがその射程に入っています。敵を愛し、迫害する者のために祈ること、これ が私たちに求められている事柄です。つまり「和解のつとめ」です。分断され、バラバラになってつながらない心をつなげてゆく仕事です。

「互 いに愛し合いなさい。これがわたしの命令である。」とヨハネ福音書15章は主の新しい戒めを記していますが、アガペーの愛の実現こそが私たちに命ぜられて いる務めです。その時、私たちは神さまのまなざしの中で「地の塩、世の光」として虹色に輝いているのでありましょう。その時、神さまご自身がその「虹」を 見て、ご自身が被造物と立てた永遠の契約を思い起こしてくださる。つまり、それは神さまが私たちを創造されたことを、創世記の1章で「よし」と祝福された ように、心から喜んでくださるのです。

『プロジェクトX(エックス)』という番組の主題歌に中島みゆきが歌う『地上の星』という曲がありましたが、神さまは私たち自身が「プロジェクトX(キリスト)」の「地上の虹」として輝くことを喜んでいてくださるのだと思います。

そのことを覚えながら「コラボレーション」を合言葉にしてこの一年の歩みを始めてまいりたいと思います。お一人おひとりの上に豐かな祝福がありますようお祈りいたします。 アーメン。

おわりの祝福

人知ではとうてい測り知ることのできない神の平安が、あなたがたの心と思いとを、キリスト・イエスにあって守るように。 アーメン。

(2006年1月29日 2006年度むさしの教会総会礼拝説教)