「読書会ノート」 曾野綾子『天上の青』

 曾野綾子 『天上の青』

豊田静太郎

 

2冊の厚い本に先ず辟易とし、著者が何を云わんとするのか掴むのに苦労した。人殺しを重ねる宇野富士男という男と、世間的には何の関係も義務もなく、効果のないことも承知しつつ手紙を送っていた波多雪子という女性の話である。なんでこんなことをと思う我々が考える愛という感情に対し、ギリシャでは友愛と云う言葉で区別されていることが述べられている。「天上の青(富士男という枯れた木に絡まって這い上がっているブルーの花:雪子)《という題吊も理解できたように思う。このことは同じカトリック作家の遠藤周作の作品にも散見すると考えるが、いかがなものだろうか。

(2009年 7月号)