むさしのだより「井戸端の戸」 哲学堂公園の梅林

私は雪国の新潟県で育ちました。高校を卒業して東京に出てきた時に、何がうれしかったかと言えば、冬の青空でした。新潟県での冬の空は灰色で、この空は11月から3月いっぱい続くのです。

今住んでいる家の近くに哲学堂公園という、哲学者で東洋大学創始者の井上圓了先生の私庭であった公園があるのですが、この公園の一角には梅林があります。毎年2月の中頃から白や紅の梅の花が良い香りを放ちながら、春の訪れを知らせてくれます。

先日の休日に、母の手を引きながら、青空のもと、雪国ではまだ考えられない、春の陽をあびながら梅の木の間を歩いてきたのですが、とても幸せなひと時の気分を味わうことができました。

地獄極楽はあの世ではなく、この世の中に、しかも私達自身の心の中にあるのではないかと思います。日々小さな幸せを見つけて生きることが生き方上手につながるのかもしれないと思いました。

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(たより2004年3月号)