たより巻頭言「Geeks & Geezers(ギークス&ギーザーズ)」 大柴 譲治

「若者も倦み、疲れ、勇士もつまずき倒れようが、主に望みをおく人は新たな力を得、鷲のように翼を張って上る。走っても弱ることなく、歩いても疲れない。」(イザヤ40:30-31)

11週間に渡る米国サンディエゴでのホスピス研修を終え、8/31に無事帰国した。皆さまの祈りとお支えとに心より感謝したい。今回の研修は様々な意味で実り豊かなものとなった。その分かち合いは9/19に予定されている教会の修養会に讓ることとして、今回は敬老主日を前にして Geeks(「ギークス」)と Geezers(「ギーザーズ」と発音)という単語をご紹介しておきたい。それらは「奇人変人」とでも訳すのであろうか、米国におけるリーダーシップ論の研究家Warren G. Bennis と Robert J. Thomasによって二つの世代を指す言葉として用いられている(『こうしてリーダーはつくられる』ダイアモンド社2003)。Geeksは21-35歳の世代、Geezersは70歳以上の世代を意味する。後者のGeezers世代のリーダーシップを分析してみると特徴的なのは、好奇心、遊び心、熱心さ、温かさ、エネルギーなどの質の高さだそうである。「いつまでも心は青春」ということになろうか。

それにしても私たちはどこからそのような力を得ることができるのであろうか。それは実は「ただ上からなのだ」ということをイザヤ40:30-31は明言している。確かに若者も倦み、疲れ、勇士もつまずき倒れることがあろう。しかし、「主に望みをおく人は新たな力を得、鷲のように翼を張って上る。走っても弱ることなく、歩いても疲れない」。そのような恵みの力が上から、人の力が尽きたところで、信仰を通して私たちに与えられてゆく。それはその独り子をも惜しまず与えてくださるほど強い神の愛の力である。

ホスピス研修を通して私の中で明確になってきたことの一つは、「大きな愛に向かって心を開いておくことの大切さ」である。死にゆくプロセスの中で私たちは様々な次元において苦しむ。それはある意味で避けることのできない自然のプロセスでもある。しかしそのようなプロセスの中で魂の安寧、平安を得ることができるとすれば、それは愛によるしかない。家族の愛、友の愛、隣人愛という具体的な愛を通して私たちは神の愛を注がれてゆくのである。主に希望をおく者は具体的な愛の絆を与えられる。その絆が死のプロセスにあっても私たちを包み、強く支える。「愛は死よりも強し」なのだ。死にゆくプロセスは私たちに人生において一番大切なもの、愛(アガペー)を明らかにする。主の愛に望みをおく人は死を前にしてもそこから新たな力を得るのである。


(2004年9月号)