~読書会から~  筒井 康隆著 『旅のラルゴ』 菅原 玲子

初めて読書会に参加をした日、私は活発に意見が交わされるその場の明るさにすっかり魅了されました。その日は大柴先生もご出席されていて、終始ニコニコと皆さんの意見に耳を傾けていらっしゃるご様子がとても印象的でした。当日は漱石の『吾輩は猫である』が取り上げられていましたが、私は漱石がクリスチャンではなくむしろ反クリスチャンのような言動を取っていたことを知り、そこでまた教会の間口の広さを感じた瞬間でもありました。

次の読書会は筒井康隆氏の『旅のラルゴ』との事、私にとり筒井氏はSFっぽい感覚の本を書く人との印象があり、今まで読もうと思ったことがありませんでした。「高度な文明を失った代償として、人々が超能力を獲得したこの世界」という帯の言葉に興味をもち、一気に読みました。一旦文明を失くした人々が次第に再び文明に染まっていく過程がとても自然であり納得がいきました。私達も又この過程を経て今日の文明にいたったのでありましょう。

私はかつて古事記に興味を持ちました。 語り部の稗田阿礼は実在していなかったと云われていますが、「この本の中でのヨーマの存在はあながちそうとも云えないのではないか。記憶力の抜群に強い人の存在はたしかにあったのではないか。」と想像力を逞しくできたことも楽しいことでした。

何よりも私は自分では決して選ばなかったジャンルの本を、こうして楽しんでいる自分を発見し、確かに私の内部で何かが変化していると感じました。

「何事も乗り越えることに意義がある。」との信条のもと、自分自身で努力をし続けてきたこれまでの日々、それが自然の成り行きに任せようとの心になり無理がなくなりました。

やがて「すべてをより大きな力に委ねる」心に私もなっていくのでしょうか。

それがいつなのか私にはわかりませんが、「委ねて祈る」そこに行きつく過程を今私は存分に楽しんでいます。

そうした意味で今回『旅のラルゴ』に出会えたことは私にとって大きな意義のあることでした。