教会と歴史(10) 石居 正己




むさしの教会元牧師、ルーテル学院大学・神学校元教授(教義学、キリスト教倫理)の石居正己牧師による受洗後教育講座です。




 (承前)宗教改革者ルターも、少し違った角度から教会の始まりをのべています。神さまが最初の人アダムをお造りになったとき、「園のどの木からも取ってたべてよい。但し善悪を知る木の実は決して食べてはいけない」と言われました。それからエバが造られた話が出てきます。創世記の3章を見ると、エバのもとに蛇がやって来て、「園のどの木からも食べてはいけないと神は言われたのか」と尋ねます。エバは蛇に答えました。「私たちは園の木の果実を食べてもよいのです。でも、園の中央に生えている木の果実だけは食べてはいけない、触れてもいけない。死んではいけないから、と言われました」と答えています。ルターはそこを説いて、神さまが直接に言われたのは、アダムに対してで、まだエバのいない時であった。ところがエバは神様の命令を知っている。神さまのもとに、神さまに信頼する人々がいて、神さまから聞いた言葉を伝えている。これが教会でなくて何であろうか、というようなことを言っています。だからルターはここまで教会を遡って考えているのであり、それ以来教会は常にあるとしていると言えます。(続く)

(1996年 7月)