教会と歴史(9) 石居 正己



むさしの教会元牧師、ルーテル学院大学・神学校元教授(教義学、キリスト教倫理)の石居正己牧師による受洗後教育講座です。



 C 教会の歴史の時

 私たちは教会の歴史の中にありますが、その教会の歴史はそもそも何処から始まるのでしょうか。教会学校の先生たちは、やがて来るペンテコステに、「今日は教会のお誕生日です」ときっと言うのでしょうが、それは全く正しいことではあっても、少し注意もしなくてはなりません。

 いっとう最初に教会の歴史を書いたのは、4世紀の初めのエウセビオスという人で、ギリシャ語で立派な書物を著しました。現在では日本語にも訳されています。ところが彼が教会の歴史を何処から書き始めたかというと、「先在のロゴス」というところからです。ヨハネ福音書の冒頭にあるように、ロゴス(言)としてのキリストは世の初めからあったと言われます。この書物の中で彼が書き伝えたいと思ったのは、「救い主の時代から私たちの時代まで連綿と続いて来た時と、聖なる使徒たちの継承、教会の歴史の中で記録されている多くの重要な出来事とその性格、云々」と言い始め、「何よりも先ず私たちの救い主にして主、神のキリストなるイエスの受肉の初めから話を進めたいと思う」と続けて、出てくるのはヨハネ福音書の第一章なのです。「初めに言があった。言は神と共にあった。言は神であった。この言は、初めに神と共にあった。万物は言によってなった。」つまり実は天地創造の初めから教会の歴史はあるというのです。(続く)

(1996年5月)