叙情詩『カレワラ』    ヨハンナ・ハリュラ

 今回は、叙情詩『カレワラ』についてです。叙情詩『カレワラ』は、医師エリアス・リョンロートがカレリア地方で歌い継がれてきた叙情詩を集め一冊にまとめて1835年に発表したもので、スオミでは子どもたちが学校で覚えて暗唱するほど有名で、誰もが大切にしている昔の物語です。

 その根底には古代フィン人の精霊信仰が流れていて、海や山などの自然界にいるいろいろな神様の話が収められています。その中の一つに、当時すでにスオミの西から入ってきていたキリスト教の影響を強く受けたとみられる物語があって、それを男性の長老が語る形で描いています。彼は言います。「私の時代は、もう終わった。私の後には、もっと強い人が現れるだろう」。そして、物語はひとりの未婚の女性が木の実を食べて身ごもり、家畜小屋で男の子を産み、そこに3人の男の人たちがお祝いにやってくる・・・と続きます。これは、まるで聖書のイエスさまを象徴しているかのようです。

 また、この長老はカンテレ(弦楽器)を上手に弾いてスオミの地にこの楽器を広めていきました。ご存知の通り、カンテレは今日ではスオミで最も有名な楽器ですが、カンテレに伴ってスオミの国には“素晴らしい音楽”と“永遠の喜び”も残されました。

  最後にこの叙情詩『カレワラ』で大切なことは、「言葉」の力です。そして言葉をもって闘うことです。そこに『カレワラ』の力が存在しているということです。

『カレワラ』についてもっと知りたい方は、
「フィンランド叙事詩カレワラ」(1976岩波文庫)、
「カレワラ神話と日本神話」(1999日本放送出版協会)
をご参照ください。

(2001年 5月号)