編集後記 「夏の匂い」 秋田 淳子

わが家の裏は持ち主はいるのですが、まだ空いたままの状態の土地です。ある晴れた日の朝、生い茂った草木を刈りに業者がやってきました。開け放しておいたお風呂場の窓からは、ガガガガッーという草刈り機のうるさい音が…しかし、それと一緒に流れるように入ってきたのは、深いみどり色した若くみずみずしい夏の匂いでした。それは家中に広がって、その日はそのかおりの中でずうっと過ごすこととなりました。

そして、私の中で幾度となく、小さかったころに外でよく遊んでた時の様子が、フラッシュバックされたのです。

青空ノ下デ夢中ニ遊ンデタアノ頃、
ススキノ茂ル中デ見タ草ヤ虫タチ

身の辺りのすべてが面白くて楽しくて。それが、記憶の中にずっと新鮮に残っているのです。

神様から吹き入れていただいた息吹き、この私たちのいちばん最初の記憶の香り…をずっと覚えていたいのです。