編集後記 「傘がない」 秋田 淳子

礼拝後、車で教会を出た私は吉祥寺に来たところで教会に傘を忘れてきたのを思い出しました。「今度でもいいわ…」と思ったのですが、気に入っている傘だけにそれを気にしながらまだ続く家路を運転するのも不安になって「エイィッ」と私は方向転換をしました。しかし、日曜日の交通渋滞とあって、教会までの道のりにはだいぶ時間がかかりそうです。思わず「こうまでして、何も傘一本のために……」と溜息をつきながらも、私は教会へと向かっていきました。

そして、どうにかやっと教会への路地を入っていった所で、ある教会員の方とすれ違いました。実は、さっき私は彼女からの挨拶にちゃんと応えないまま教会を出てきていたので、気になっていたのです。だから、思いっ切りの笑顔で私は彼女に「さよなら」を伝えました。

教会へ戻ってまで取りにいきたかった本当のものは、傘ではなく彼女との関わりだったのでしょう。全てのことに時があるように、ちゃんと意味もあるのです。

(99年 7月)