編集後記 「忘れられた封筒」 秋田 淳子

かつて働いていた職場で、毎月数千冊の月刊誌を発送する作業がありました。少人数のスタッフの手で、封筒に宛名を貼り冊子を入れて封をする。作業は一日がかりでしたから、とにかく全部の発送を終えることで精一杯でした。

あるとき発送を終えた数日後に、その中の一通が住所不明で戻ってきました。「あとでゆっくり調べて、送り直そう」と、ついその封筒を引き出しの中にしまい込み、それからすっかりそのことを忘れて日が過ぎていきました。

後になって、そのことが上司に知られ「送り手の私たちからしたら、数千冊の中の一冊かもしれないが、受け手からしたら毎月届けられる唯一の一冊なんだ」と叱られました。

私たちの交わりも、もしかしたら大勢の中の一人と一人かも知れませんが、個人という重さを考えたとき、それは「唯一」の貴方と「唯一」の私なのです。そして、神様と私との間には永遠に計り知れない「唯一」が存在しているのです。

(2001年11月)