むさしのだより「井戸端の戸」 蛍の光

先日、群馬県の猿ヶ京温泉にいきました。宿近くのたんぼで蛍がりができるというので、見に行きました。宿泊客に蛍がりを楽しんでもらうために、近隣の温泉宿が農家と協力し、無農薬で稲を育て、その田んぼに蛍の幼虫を放して育てているとのことでした。

50名ほどが近隣の温泉宿からたんぼに集まりました。最初の一匹をみつけたときは、宿泊客から歓声があがり、そこここで「あっちにいる!」「ここにも!」と騒がしくみていました。しだいに目がなれ、強い光を放ちながら飛ぶ源氏蛍や草むらで点滅するように光る平家蛍がたくさん見られるようになると、人の声はだんだん囁くような大きさになり、たくさん人がいるとは思えないほど静かに観賞していました。私も蛍の光を見ながらおだやかな、幸せな気持ちになっていきました。

蛍の光は電飾にくらべれば弱いけれど、それには命があり、次世代に命をつなぐために一生懸命だから、はるかに美しく、見る人の心を慰めてくれるのだと思います。

(と)
 (たより2007年7月号)